6月に配信しましたS.P.Farm通信でも少し触れましたが、いよいよ今年度より、林野庁でも林業成長産業化総合対策の一環として、ICT等を活用した、とりわけ路網整備に係る高度技術者を育成するための各種事業が始まりました。当社においてもその中の一つである「ICT等を活用した路網整備推進技術者育成事業」に関わらせていただいています。

国内の林業界におけるICTの導入は、欧米と比較するとかなり遅れをとっていながらも、数年前から少しずつその活用が始まっており、ここ1〜2年で急激に脚光を浴び始めたように思えます。とは言いつつも、ハード・ソフトの両面でも、またインフラにおいてもまだまだ開発半ばといったところで、これから本腰を入れて取り組んでいくことになるのだと思います。どのくらいのスピードでICT化が進むかは未知数ではありますが、林業就労者人口は確実に減少しながらも、国産材の利用拡大に向けて様々な対策が講じられていくことは確実であり、林業界全体でICT化を推進させていくことは必要不可欠な時期にきているのは間違いないと思います。

実際の研修では、ICT関連の様々なソフト(ツール)の操作(活用)方法等についても学びますが、そこは単なる技術の習得ではなく、そのツールを最大限活用しつつ、いかに高効率かつ低コストで木材を搬出する路網を設計するか、またその結果、その地域での林業の成長産業化にどのようにつなげていくか、その構想を描ける者を育成するためのカリキュラムで構成され、講義、演習、現地実習を行います。また研修は、中央(都内における集合)研修が全5回、その後全国7ブロックに分かれての現地研修が各1回ずつ開催されることになっています。ちなみに、本日現在においては中央研修の第4回目が終了したばかりです。受講生は、国や都道府県、市町村の行政担当者をはじめ、民間企業や森林組合の職員等様々で、そのほとんどが初めてICTを学びにきた方々です。
研修を企画・運営する側も同様で、専門講師(研究者や技術者)の力をお借りして、手探りながら必死になって対応しているというのが実情です。

新しい(研修)事業を立ち上げる時というのはそういうもので、その時の苦労が良いものを創り上げる原動力となると信じていつも取り組んできました。
おそらく、本研修が今後林業界において増えてくるであろうICTに関する様々な研修、あるいは林業4人材(森林総合監理士(フォレスター)、森林施業プランナー、フォレストマネージャー等の統括現場管理責任者、森林作業道作設オペレーター等)を企画・設計する上での一つの基準、あるいは道導になるものと思いますので、我々もそういう視点で学べることはしっかり学びながら、研修自体の成果も出せるよう今後も挑んでいきたいと考えています。
先般、森林経営管理法が閣議決定されました。少し気が早いかもしれませんが、今後は森林環境税も導入され、平成31年度からは森林譲与税が運用されることが見込まれています。運用する主体は市町村ではありますが、森林・林業専門の担当者がいるところは少なく、都道府県担当のバックアップを得ながら、実務的な部分では地域の多様な利害関係者が主体となる協議会等によって運用されるのでは、という声が聞こえてきます。仮にそうであったとしても、実際に山林に入り施業プランを立て、伐採・搬出あるいは整備するプレーヤーの主体は、林業に携わる森林組合や素材生産等をおこなう林業事業体、そして一部の森林ボランティア団体になってきます。そういう意味では、それらの担い手に対する期待が益々高まってくるはずです。しかし、林業や森林整備の担い手は年々減少、その期待に応えられるだけの人材が確保できていないのが実態です。その背景には、林業の3K(きつい、汚い、危険)の払拭の遅れや賃金の安さ、従事者の高齢化、歯止めがかからない地方の過疎化等様々な負の要因の改善が進まないという問題があるのだと思います。このような状況で、いくら地方交付税を増やしても事態の改善は厳しいものと言わざるを得ません。

だからこそ早急に行わなければならないのは、林業に従事する事業体の抜本的な経営改善と川下からの新規事業体参入のための仕組みづくり、ICT化による高効率・低コスト林業の確立と3Kの払拭、サプライチェーンマネジメントなのだと思います。どこか一カ所の梃入れでは無く、川上から川下まで一体となった改革に取り組む必要があるのです。これまでにも林業の再編や改革は行われてきたのだとは思いますが、川上から川中、川下までの距離の縮まり具合が鈍く、連携や協働とは言葉ばかりで、川上にいくほどお金や人、情報等が回ってこないという状況に陥っているように思います。反面、その状況に対する“仕方ない感”や“改善先延ばし感”、“責任転換感”は川上の中で滞留しているように感じます。

しかし、今やそんなことを言っている場合ではないのです。今こそ、人と情報、知識や技術を林業界全体で交流させ、競争と連携との両輪でビジネスチャンスをしっかりと確立していく必要があるのです。川上においては、人数という点では圧倒的に人材不足であることは事実ですが、これまでにいなかった優秀な人材が育ってきているのも事実です。他方、川下から儲かる林業を目指して川上に参入しようとしている優れた人材も出てきています。今後は、そのような方々によって、整備・導入が進んできているICT等を活用しながら、これまでにない林業のあり方を一緒になって考え、あらたなビジネスモデルをどんどん構築してもらえたらと願っておりますし、一部では、既にそのような取り組みが始まっているとも聞いています。
この転換期に変われるか否か、我々自身も含め今がまさに決断、勝負の時なのだと思います。
釜石地方森林組合が、イギリスに本社を置く金融機関バークレイズグループの支援を受け、2015年よりスタートした『釜石・大槌バークレイズ林業スクール』の2018年のオープンセミナーに講師として招かれ参加してきました。テーマは「林業事業体の経営・組織運営の実情と課題、今後の可能性について」です。“経営”を専門とはしていない当社ではありますが、過去10年間に渡り林業の担い手の育成事業や各種調査、組織づくりのお手伝いをさせていただき、正面から数多くの森林組合や民間の林業事業体と向き合ってきた中で見えてきたことについて私なりに話をしてきました。参加者の多くが岩手県内、しかも顔見知りの方々もいたせいか、質問や鋭い指摘等もたくさんいただき、私にとっても新鮮かつ有意義な時間となりました。

そんな中、非常に感銘を受けることがありました。地元釜石出身の18〜25歳の3人の研修生(いずれも釜石地方森林組合で修行中)の言葉(思い)でした。「何故、林業という仕事に就こうと思ったの?」という私の問いかけに、目を輝かせつつもさらっと「東日本大震災や昨年発生した大規模な山林火災を目の当たりして、自分でも地元の復興に何らかのかたちで参加したいから」と答えたのです。個人的な欲がないわけではないのに、皆個のことよりも周りや社会を思いやる気持ちが強く、勝っているのです。この若者たちが震災等を経験してどのような思いを抱いたのか、またあの時からの苦労をどのようにして乗り越えてきたのかはわかりませんが、少なくとも個々に芽生えた地元や人に対する思いを、周りの人や社会が大切に育み支えてきたのだろうということは想像できます。
それはもう既に復興という枠組みではなく、皆が主体となって取り組める新たなコミュニティや社会構造を構築する働きに変わってきているのだと思います。

人材育成というと、とかく知識や技術を植え込む事と考えられがちですが、それ以前に、大切にしなければいけない価値観やポリシー等を育む環境を整備、あるいは提供することこそが重要なのではないかと改めて気づかされました。
この先、この若者たちの思いが是非ともかたちになることを願いますし、我々もまた、共に苦労をしてきた地元の方々と同じようには出来ないかもしれませんが、我々にできる方法でそれらを支援していきたいと思っています。
そんな気持ちを抱かせてもらえた釜石の空気、色、人、思いに感謝します。
平成30年度がスタートしました。
ここ数年、当社の事業の核になっているのは「森林・林業の担い手育成事業」です。
おそらく本年度も同様となるものと思われます。
他の方から見ると些細な事かもしれませんが、私共は林業・・の担い手ではなく、「森林・林業・・ ・・」の担い手にこだわっています。現実的には、森林総合監理士や森林施業プランナー、フォレストマネージャ―等の現場技能者を育成する事業に携わる割合が高いわけですが、林業に従事する人だけではなく、森林を何らかのフィールドとして活用する中で、森林の保全につながる活動を行っている人や、それらの活動を通じて地域社会・経済の活性化に努めている方々の応援や育成なども重要なことだと考えています。その理由としましては、一見、森林の整備(保全)面積や事業の規模だけを見ると、林業の担い手の育成を拡充したほうが効率的かつスピーディに森林が保全されると思えるかもしれませんが、一つひとつ地域に視点を落として考えてみると、林業従事者も、それ以外の仕事に従事する方々もその地域で暮らし、その地域の経済や社会を支える主体者であり、多くの方々がそこにある多様な森林資源に対する様々な価値を理解し、多角的に森林を活用する機会や場面を多方面から創造していくことこそが、地域社会や経済を活性化していく上で重要になると考えるからです。
林業に関心は無くとも、森林環境教育や森の遊び場、森林セラピー、保健休養、スポーツ等であれば関心を持っている住民は少なくなりません。それらの方々が森林に抱く価値観と林業従事者が森林に抱く価値観が相容れないものではないと思っています。

実際に様々な地域で、例えば森林組合が地域住民のために森林環境教育を実施していたり、民間事業体が森の遊び塾のような取り組みを行ったりしています。しかしながら、全国規模からすれば、極々限られた地域での活動でしかありません。
同じ地域に住みながら、同じ森林資源を持ちながら何故森林を軸に人が繋がらないのか、その要因の一つが人材育成のあり方だと思っています。当社では、例えば森林保全NPOやボランティア団体を対象とした人材育成事業に15年程前から、林業の担い手育成に係る事業に10年程前から関わっていますが、いずれも双方の存在や価値、地域における役割、協働等にまで深く踏み込んだことはありませんでしたし、その必要性について議論されることもほとんどありませんでした。ともすれば、それこそ双方相容れない関係であるかのように、お互いの活動に踏み込まないという暗黙の了解があったようにも思えます。またそれぞれに、人(個)の知識や技術を高めれば、森林整備活動が進み森林が保全されていくと思っていた節があったのかもしれません。つまりこれまでは、人(個)やその人に関係する組織にばかりに焦点を当てて、地域全体や社会、コミュニティの創生という視点からの森林づくりと言う観点での学びの場がほとんど無かったように思うのです。
それは、そういう“時代”、“プロセス”と言ってしまえばそうなのかもしれませんが、これからは、森林に係る様々な価値観を抱く方々が、それぞれの価値を共有し、お互いの役割を以って地域社会や経済、コミュニティの発展のためにどのように力を合わせていくかということについての学びの場を構築していくことが大切だと考えます。
極論するならば、森林をどうするかということよりも、森林という共通の資源を介して、その地域で暮らす人々の生活をどのようにして豊かにしていくかということを考え、行動に移せる人を育成していくかということなのだと思います。

今、全国各地で様々な森林・林業・・ ・・の担い手のスペシャリストが輩出されています。そしてまた、当社においても、その多様な価値観を持ったスペシャリストとの繋がりも出来てきました。これまで展開してきた人材育成(教育)の体系を直ぐに変えることは困難だと思いますし、どのような能力を持った人材を育成すべきなのかということについても、もっと議論を重ねていく必要があるとは思いますが、先ずはそれぞれのスペシャリストを繋ぎ、コーディネートすることはできると考えています。今後はこの橋渡しも当社の役割だと思って取り組んでいくつもりです。
2018年2月19日、20日の日程で『森林施業プランナーシンポジウム』が開催されました。本シンポジウムは、主たる対象を認定森林施業プランナーとしながらも、これから認定森林施業プランナーを目指す者や森林総合監理士(フォレスター)、林業普及指導員、その他林業の成長を目指す様々な主体者が一堂に会し、全国で活躍する森林施業プランナーの活動事例や抱えている課題、今後の役割等について広く情報・意見交換する場として毎年開催されています。
今年は、森林施業プランナー育成研修が開始されて10年となり、また森林施業プランナー認定制度が確立されて5年が経過し、これまでに1,725名(2月19日時点、平成29年度の新規認定、更新者数は含まず)の認定森林施業プランナーを輩出しています。

実は、この10年の研修と5年の認定制度の積み重ねの意味は非常に大きく、優秀な森林施業プランナーが全国各地で活躍していることが、当シンポジウムでの活動報告を聞いてもはっきりとわかります。森林施業プランナーの主たる役割は、森林経営計画の作成と実行管理、提案型集約施業の推進等ではありますが、様々な方々に個別に話を伺いますとそれらの業務域に限らず、組織運営の推進役、業務全体の管理者、さらには経営管理者として活躍している方々も増えてきています。世代交代が加速し、認定森林施業プランナーが組織運営の中核を担う者になってきているのです。

また、今年のシンポジウムで大きな話題となったのが、森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)並びに新たな森林管理制度(システム)です。この大きな制度改革の中で、森林施業プランナーがどのような役割を担っていく必要があるのかということです。
本制度においては、市町村(地域)単位における森林管理や森林整備に係る施策の拡充・強化が要請されるわけですが、市町村(地域)の中で誰が実際にそれを遂行・管理していくのかというと、やはり地域にしっかりと足が根付いている森林施業プランナーに他ならないのではと個人的には思っていますし、期待もしています。これまで森林施業プランナーは森林所有者への営業担当窓口、あるいは森林所有者の代弁者とも言われてきましたが、これからはファイナンシャルプランナー的なコンサルタントに近い業務まで担うことになってくるだろうと思っています。それを考えると、森林施業プランナーの認定制度の仕組みや体系も変えていく(例えば、コンサル等ができる上級プランナー制度の確立や育成体系の確立等)必要があるかもしれません。いずれにしましても、森林施業プランナーは、社会情勢の変化や地域のニーズに対応できる地域林業の成長に向けた中核的推進者としてその役割を担っていただくことになるのだと思います。いや、担っていただきたいと願います。これは森林施業プランナーに課せられた負担ではなく、林業の成長産業化ひいては森林施業プランナーの社会的地位の向上に向けた大きなチャンスだと思っています。

そしてまた、我々も単に外野から応援するだけではなく、それらの状況に対応すべく人材の育成や、新たな能力向上に向けた様々なプログラム開発、サポートメニューの拡充、提供、フォローアップに努めていく必要があると考えています。