林野庁は2004年に「森林セラピー研究会」を立ち上げました。
同研究会によると森林セラピーとは「森林の地形や自然を利用した医療、リハビリテーション、カウンセリング」および「森林浴、森林レクリエーションを通じた健康回復・維持・増進活動」のこと。

また森林セラピーの代名詞とも言える「森林浴」は、森林の樹木が放つ「フィトンチッド」を浴びることとされます。このフィトンチッドとは、殺菌力のある揮発性物質のことで、本来は樹木の葉や幹が昆虫などに食べられないようにしたり、他の植物の成長を抑制したりするために放出されるのですが、人間が浴びると自律神経を安定させるなどしてリラクゼーション効果が得られると言います。さらにこの森林浴には肝臓機能の改善効果や、快適な睡眠をもたらす効果があるとも言われています。

このような「森林セラピー」という言葉や考え方は比較的新しいものかも知れませんが、山や森林は昔から各種スポーツやレクリエーションを楽しむ場として親しまれており、日常生活で疲れた現代人の心と体を癒す格好の場の一つと言えるでしょう。

一見して、このような森林の機能と企業はあまり関係がないと映るかも知れません。しかし、企業の森づくりとして、国や地方自治体からの借受林、あるいは社有林で森林保全活用に取り組する企業の中には、社員がボランティア活動に楽しく取り組むためにもレクリエーションを重視する傾向が見受けられます。また、社員の福利厚生やリフレッシュ休暇を目的に、ハイキングなどの森林でのレクリエーションを企画する企業や、保全・整備した事業所周辺の森林や緑地帯を地域に開放している企業もあります。
これらの取り組みはいずれも森林が持つ保健・レクリエーション機能を活用したものと言えます。

企業の社会的責任がますます求められ、社員が働きやすい職場の環境づくりをはじめに、消費者や地域住民との交流の促進、地域貢献等が重視される今日においては、人の精神をリラックスさせ、身体をも癒すという森林の価値は企業経営を考える上においても見直されるべきものではないでしょうか?