寄り合いひろば

森林と里山の保全・有効活用を本気で考えるブログ
S.P.FARMが提供する当ブログは、 森林を取り巻くさまざまな立場の方々とつながり、森林と里山の保全・有効活用を実現する「寄り合い」の場です。
S.P.FARMは 都市と農村、企業と森林をつなぎ、新しい “森林活用のかたち”をご提案することで、 日本の森林・里山を有効的に活用する新しい社会システムの構築をめざします。
  「企業との連携による森林再生・活用プロジェクト構想」http://www.sp-farm.com/moriduku.html(S.P.FARMのHP内)も是非ご覧ください。
獣害
京都駅から在来線で約1時間のところに、森林施業プランナー育成研修を実施している日吉町があります。駅の周辺にはコンビニ等や娯楽施設など一切無い非常にのどかな山村地域です。研修自体は日吉町森林組合の施設内で実施していますが、宿泊はさらに車で10分ほど山奥にある「山の家」というところです。

先週のこと、朝の5時頃、鹿の「キュゥ〜ン、キュゥ〜ン」というけたたましい鳴き声で目を覚ましました。極近くの場所であまりにも長い間鳴いているので行ってみると、立派な角をもった大きな雄鹿が、民家の畑の防護ネットにその角を絡ませ、それを外そうと必死にもがいているところでした。この近辺は相当数の鹿がおり、畑や田んぼを荒らし、ヒノキの根元の皮を剥がし食べてしまいます。その被害は甚大なものです。鹿は彼らの天敵であったオオカミが日本から消えたときからどんどん増え、樹木や農作物に大きな被害をもたらすせるようになっています。ここ日吉ではこの問題は深刻なもので、対策に非常に苦労しているとのことです。無論、一般市民が簡単に駆除することなどできるはずもなく、広範囲に細かく防護ネットを張り巡らせて対応するしかありません。今回、角を絡ませたネットもその一部です。確かに目の前でもがき苦しみ暴れる鹿を目の当たりにするとそれはそれで辛いものがありますが、手を出せるはずもなく、ただ、宿のオーナーに町役場が始まる時間を待って連絡してもらうしかありませんでした。その日は研修最終日の朝でしたので宿に戻ることは無く、その鹿がどのようになったかは聞いていませんが、ネットから外されそのまま山に帰されるというようなことは恐らく無いでしょう。

鹿対策についてはほぼ全国的な問題で、時期を決めて猟師等が駆除にあたっている地域もあります。
鹿のほかにも猪や熊、猿など人がつくったものに手をつける野生動物に対する対策については、これまでにも各方面で相当議論がおこなわれており、それぞれの立場で見解は異なるかと思いますが、山村地域で暮らし、その土地の恵みで生計を立てている人々にとってはやはり野生動物との戦いは避けて通れないことでもあり、両者がうまく共存できる術を人間が講じていかなければなりません。
言葉で表すように簡単なことではありませんが・・・。


改めて、人と野生動物との関わりについて考えさせてくれた日吉の自然に感謝!
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 15:29 | comments(0) | - | - | - |
今年もやります!森づくり体験セミナー
 毎年秋に実施してきた『森づくり体験セミナー』も今年で7回目を迎えました。実施してきたと言っても当社の事業として行ってきたのではなく、理事として関わっている“NPO法人みんなの森づくり協会”が実施してきたものです。


都市近郊の社会人・学生を対象にしたプログラムで、間伐することで森を守ることに繋がること、さらには都市近郊の森林を守っていくことの重要性を知ってもらう事を目的に、荒廃した人工林の間伐体験を中心に、蕎麦打ちや芋掘り、山村地域の方々との交流会等1泊2日の日程でこれまで行ってきました。

今年は協会の資金難や事前の調整不備等もあって、一時は実施を取りやめることも考えましたが、実行委員の皆さんの熱い思いもあり、何とか日帰りコースで実施することにしました。実施は11月5日(土)を予定しています。開催場所は茨城県石岡市。朝8時に東京駅に集合し、貸切バスで現地まで移動。つくばね森林組合の指導のもと、手鋸を使って間伐作業を実施します。昼食は参加者全員で蕎麦を打って食べます。帰りには、近くの産直場で新鮮な野菜や果物等を買って帰ります。正しく間伐体験初心者にはうってつけのセミナーです。参加費や募集要項等の詳細は未定ですが、決まり次第当社のHPのイベント・セミナー案内に掲示する予定です。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 16:12 | comments(0) | - | - | - |
林業研修のファシリテーターが足りない!
当社では、平成19年度より林業に従事する方々の職業能力向上研修事業に関わってきました。提案型集約化施業を中心になってとりおこなう『森林施業プランナー育成研修』に始まり、作業現場の管理者である『フォレストマネージャー育成研修』や『フォレストリーダー育成研修』、そして、今年度からは、地域の森林を包括的に管理する「フォレスター」(平成25年度以降に国家資格として認定登録を目指す)の候補者を育成する『准フォレスター育成研修』に携わることになりました。研修への関わり方としては、研修プログラム企画作成、研修現場の運営管理、研修全体を取り仕切る事務局等様々ですが、全研修とも共通して必ず担う役割がファシリテーターです。

研修受講者が研修に主体的かつ積極的に参加し続けていられるよう、またそれにより研修の狙いが達成されるよう全体を進行管理していくのが現在携わっている研修事業におけるファシリテーターの役割なのですが、林業というのは非常に幅広いかつ高度な知識、技術を有する専門的な職業であり、それらに従事する方々を対象とした職業能力向上研修ですので、専門用語や制度、現場の作業、業としての仕組み等を知らなければファシリテーターとしての役割はなかなか務まりません。とりわけ、高いレベルを目指す方々を対象とした研修においては、ファシリテーション技術もさることながら、受講者の普段の業務内容、各都道府県施策の動向、林業界全体の動向、法制度等も有る程度知っておく必要があります。

職業能力向上研修である以上当然のことかもしれませんが、そうなるとなかなかファシリテーターの担い手が見つかりません。職業能力向上研修にファシリテーターを配置すること自体、林業界においては新しく画期的なことですし、研修の成果も見え始めているところですが、そのような研修を進行管理するファシリテーターも一緒に発掘、育成していかないと、研修の質が保たれなくなってしまうことも考えられます。

今後、当社においても、先ずは林業界を中心に職業能力向上研修におけるファシリテーターの位置づけ、役割、受講者や研修のレベルに応じた習得すべき知識・技術を確認・整理し、それを担えるファシリテーターの発掘と育成に取り組んでいきたいと考えています。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 13:05 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
小石川後楽園で人間の創造力を学ぶ
 先日のこと、散歩がてらふらっと小石川後楽園にいってきました。小石川後楽園は東京ドームの真横にある国の特別史跡及び特別名勝に指定されている都立庭園です。1629年に水戸徳川家の初代藩主徳川頼房が築き始め、ご存じ水戸黄門(徳川光圀)が完成させ命名したと言われる庭園です。現在の広さは当時の半分程になっているそうですが、それでも一周ゆっくり歩いて見ると1時間はたっぷりかかります。1月ですので桜も紅葉も無く、かすかに梅が一部ほころび始めているだけで、決して華やかさはありませんでしたが、琵琶湖をイメージした池を中心に、神田上水の分水を引き入れた「回遊式泉水庭園」は美しく、白糸の滝や模擬清水寺など、各地の景勝を模した湖、川、山、そして田んぼまでがあり、それぞれの場所に行くとまたそれぞれが表となり裏となり、非常にわくわくさせられる空間です。ディズニーランドの古き良き日本版と言っても過言ではないくらいインパクトがありました。(ふと視線を上げ、遠くを見ると四方大きなビルやドームに囲まれていることに気づき、その醜さに落胆しますが・・・)

何より、この空間をイメージした人、実際に設計し施工した人たちの創造力の凄さに感動しないわけにはいきません。
四季それぞれに方々歩き、様々角度からその地形を観察し、そこにある色、音、臭いまでも身体、そして心の中にしみこませ、更には技術と知識をしっかりと持ってイメージしながら創り上げていったのかと思うと、まさにプランナー、デザイナー、クリエイターの極みであると思います。

物事をどういう視点からどのように見るべきなのか、感ずべきものは何なのか、またそれをどのように理屈に落としていくのか、改めて感じ考えさせられたような気がします。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 12:47 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
2011年 森と都市をつなぐコーディネーターとして
螢┘.ピー.ファームを立ち上げ、森と都市、森と企業をつなぐ仕事に携わりすでに10年以上が経ちます。一言で森と都市、森と企業をつなぐ仕事と言っても、取り組み当初と今ではその立ち位置が異なります。取り組み当初は、主に企業が森林の保護や保全に関わることの重要性、メリット等について、主に企業に発信するかたちで資料づくりや提案、あるいは企業人を対象とした間伐体験、山村交流セミナー等のイベントを行ってきました。

その後、企業の森づくり活動が少しずつ浸透してくる頃になると、独自の調査・分析方法による『企業の森づくりランキング』を発表し、しっかり取り組んでいる企業、そしてそれを社会に発信、コミュニケートしている企業を評価するとともに、第3者がきちんと評価することの重要性を提唱してきました。ここ数年は、『企業の森づくりランキング』こそ、企業の森づくり活動が多様になり、また定性的な部分の評価が難しくなってきたこともあり取りやめておりますが、企業のみならず行政や教育機関等へも森林の保護・保全の重要性や、森林を環境教育、保健・休養、ボランティア活動のフィールドとしての活用方法、さらには当社のホームページでも紹介しているように、国産材や間伐材の有効活用方法の提案等も行ってきました。またその一方で、全国の山村地域に出向き、林業を生業としている方々や森づくりNPOの方々の人材育成、スキルアップ等の事業に参加し、山村地域の方々に対しても、都市部との連携や協力の重要性とその方法について提案してきました。

取り組み当初は、都市部での主に企業等への提案が中心であったのが、この10余年をかけて、ようやく山村地域や森林・林業の専門家等とのネットワークもでき、本当の意味で森と都市を顔が見えるかたちでダイレクトにつなげられる体制を構築することが出来ました。

今年は、おりしも国際森林年でもあり、また森林・林業再生プランが本格的に始動する年になるので、これまで培ってきたネットワークとノウハウをフルに活かして、森林、山村地域、都市部、企業等がそれぞれにWin−Winの関係が構築できるよう様々な提案とコーディネートを行っていきたいと考えています。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 09:51 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
『体験の場の力』を改めて実感
先般、Jプランナー研修という森林施業プランナーを育成する仕事で長野県の南信州に行ってきました。研修場所はこの地域を管内とする飯伊森林組合が経営する昼神荘という研修所を備えた宿泊施設です。何故森林組合が旅館施設を経営しているかは置いておきまして、この施設を運営するのも森林組合の職員の方々です。森林施業プランナーの育成は3年前から全国各地で行われ、私もずっとこの仕事に関わってきましたが、森林組合の職員がこのような林業以外の仕事をしている場所は他には無いと思います。

研修を始める前に必ずスタッフミーティングを行うのですが、ミーティングの開始早々、先ず、最初に感じたことは、飯伊森林組合の職員の方々の第一印象が他の地域のそれとは随分違うなということでした。違いは、視線と笑顔と距離感でした。職員の皆さんが相手をまっすぐに見つめ、笑顔で親しげに話をすることができるのです。これは森林施業プランナーが持つべき重要な要素なのですが、森林組合の職員さんは比較的シャイな方が多く、初対面の人に対してなかなかこの様な接し方が出来ずにおります。そこで、このような人材をどのように育成したのか聞いてみたのですが、特別なことはしていないとのことでした。たまたまそのようなキャラクターの方々が集まったのかと腑に落ちずにいたのですが・・・。

これは後から聞いた話なのですが、研修に参加している研修生(組合の職員)全てが交代で昼神荘の運営に携わっているとのことなのです。食事の準備、後かたづけ、掃除、宿泊者のアテンド、男性職員に至っては宿直等何でもこなしているそうです。

なるほど、このようなお客様相手の仕事に携わることで自然と接遇方法が身についたのだと思いました。正に日常業務の中で接遇方法のOJT研修が行われていたのです。

実は、このような“体験の場”を意図的に設けることは学びにとって非常に重要なことだと思っています。体験の場では、一瞬一瞬の判断や対応が重視され、集中力や適度な緊張感も必要になります。それは、机上では決して学べません。多くの人が関わるような場であれば尚更です。今日、ネット上には様々情報が存在し、それをつなぎ合わせればいくつもの企画やサービスが効率よく瞬時に提供できるように思われがちですが、やはりそれは机上のもの、体験というリアリティが無いものには魅力や説得力が欠落しています。体験の場は、ある意味他人とそして自分との格闘です。それを避け、楽をしていては決してその人の価値は高まらないと思います。体験の場には、その人を磨き成長させる力があります。私たちは、これからも一瞬一瞬の体験の場を大切にし、様々な機会でその場を提供していきたいと考えています。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 11:21 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
まだまだ86歳、森で活躍する現役組合長
私が関わる『特定非営利活動法人みんなの森づくり協会』では、毎年、都市部に在住する社会人とその家族を対象とした1泊2日の“秋の森林づくりボランティア”と題した体験セミナーを実施しています。主に都市近郊の山村地域に出向き、その地域の森林組合等の林業従事者に講師になっていただき、森林の力や価値、森林・林業の実情をお話いただくと共に、実際に手入れが遅れている森林に入り、間伐作業等の森の整備体験をさせてもらうという企画です。

私たちが昨今、この活動の拠点とさせていただいているのが茨城県にある筑波山の麓にある『つくばね森林組合』管内の民有林です。民有林ですので所有者への交渉を始め、間伐等に必要な道具(のこぎり、ヘルメット、ロープ等)の調達、現場での技術指導等は全て『つくばね森林組合』にお願いしています。

『つくばね森林組合』はオートキャンプ場も経営しており、ここでワークショップや地元特産品を活かした昼食づくり等のプログラムが出来るということもあり、私たちのセミナーを行う打ってつけのフィールドになっています。

この『つくばね森林組合』のトップで現役バリバリで経営や指導にあたっているのが、茨城県森林組合連合会代表理事会長も務めたことのある、今年86歳になった常駐組合長の木崎眞氏です。私どもが『つくばね森林組合』に毎年ご指導等をお願いする理由の一つに、この木崎組合長の存在があります。木崎組合長の山への思い、現場での立ち振る舞い、発する言葉は参加者皆を魅了し参加者皆を元気にしてくれます。それでいて常に謙虚で常に新しいことを学ぶ姿勢は忘れていません。訛りの混じった冗談をニコニコしながら言います。そんな魅力が皆を引きつけているのだと思います。

森林・林業、そして組合経営や担い手の育成はどこも厳しい状況にあります。茨城県の南部に位置するつくばね地域は、北部の地域と比較して森林資源が明らかに乏しく厳しい林業、組合経営を強いられているはずです。ましてやそのような状況下で、茨城県森林組合連合会の代表理事を務めるなど、大変な苦労をされてきたのだと思います。

それでも、いつも一緒にいる組合職員でさえも感心する(呆れる)程、毎日元気に山へそして公演へと駆け回る木崎組合長の力の源はどこにあるのかを考えると、やはりそれは山への想い、強い愛情、そこで何十年も生き、生かされてきたという誇りなのだと思います。

木崎組合長は、「俺はちょっと調子悪くなったりしたら山にいくんだ。山を歩いているとみんな治っちまう。山に行かなくなったら病気になってしまう。山はいいぞ、山で働け。」と力強く言います。

山にそんな力が本当にあるのか、それとも山を守りたいという山への想いや愛情が組合長の生きる力となっているのか、両方なのか・・・、私には計り知れないことですが、山の仕事を本当の意味で生業としている数少ない人の一人であることは間違いないと思います。

セミナーの終盤に、「来年もご指導宜しくお願いします。」と伝えましたら、「おう、待ってるぞ!」とやる気満々で答えてくださいました。来年もまた、木崎組合長にパワーをもらいに行きたいと思います。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 10:33 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
『林業の再生による地域雇用の拡大』策にもっと多くの意見を!
管内閣の成長戦略の柱にもなっている「林業の再生による地域雇用の拡大」。林業で100万人の雇用を創出するというものですが、そもそも「林業」について、とりわけその実態を知る人がどのくらいいるのでしょうか。特に、都市部で暮らす大半の国民は林業を知らない、また関心すら持っていないのが現状なのではないかと思います。

でも、成長戦略の柱にするということは、そこに多くの人力と税金が注がれるということでもあります。林業に関心は無くとも“税金の使われ方”には多くの方が関心を持たれるはずです。となると、管内閣が進めようとしている“林業の再生”とはいったいどういうものなのか、それを見ておく必要があります。

それが示されているのが『森林・林業再生プラン』です。その骨子は昨年の12月25日(前鳩山政権時代に現管総理が軸になってまとめたもの)に発表され、今年度中に詳細まで固められ発表される予定です。今年の6月には中間報告がまとめられ、既に林野庁のホームページの以下のサイトで発表されていますので、是非ご覧になってください。


※林野庁HP内『森林・林業再生プラン』についての参考ページは
こちら
です。


では何故、ここで『森林・林業再生プラン』の話を取り上げたかと言いますと、森林・林業に関心を持たない方が多いということは、この『森林・林業再生プラン』が極一部の専門家の方々による議論の中で策定されてしまうということ、成長戦略の柱でもあり、税金を使い100万人の雇用を創出しようとするプロジェクトであるにも関わらず注視すらしないということに大きな懸念を抱くからです。同時に、『森林・林業再生プラン』の策定にあたり、これまでに無い意見や知恵が多くの方から注ぎ込まれることで、より精度そして実現性の高い再生プランになっていけばと願うところにあります。


「森林は水を蓄え、空気を浄化し、様々な生物の営みを守る大切な財産です。だからみんなで森を守っていきましょう!」等と声高らかに発することも確かに良いことでしょう。

しかし、今私たちが置かれている社会・経済・雇用の問題を凝視し考えるならば、各々がもう一歩踏み込み多くの力でこの問題の解決にあたっていかなければならない状況になってきたのではないでしょうか。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 11:24 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
牛にやさしく、地域にも貢献するカラマツ間伐材畜舎
北海道のイメージを聞くと多くの方が“酪農”と答える通り、札幌や函館などの都市は別として、明治の開拓以降北海道全土で広く酪農がおこなわれてきました。とりわけ牧草地帯に囲まれた体育館ほどの大きな畜舎で乳牛が育てられる様は、北海道酪農を象徴する光景として強く印象づけられているかと思います。

実はこの体育館ほどの大きな畜舎、現在使われているものの多くが昭和の好景気に建築された鉄骨のフレームとコンクリートで覆われた畜舎なのですが、数年前から地域のカラマツ材をドーム型に組んだ「カラマツドーム型畜舎」への建て替えが一部の地域で進められるようになってきました。この取組を進めてきたのは酪農家(有)リゲルファームと畜舎の設計、製作、施工・構造計算等を担当した置戸林産流通加工協同組合連合会、施工を担当した茶木建設(株)、材の調達・製材を担当した佐呂間町森林組合が設立した「カラマツドーム型畜舎研究会」いずれも北海道網走近隣の地元の事業体の集まりです。

実はこの「カラマツドーム型畜舎」夏は涼しく冬は比較的暖かい、臭気が少ない、アンモニア塩害・潮風に強く鉄より腐食が少ない(耐久性がある)、疾病性の発生率が鉄骨の1/3〜1/2である、乳量の増加と肉牛の肉質が向上した、固定資産税・所得税が鉄骨の約1/2程度で済む等々、様々な部分で鉄骨製の畜舎よりも優位であるということなのです。

実際に私も(有)リゲルファームの「カラマツドーム型畜舎」の中に入ってみましたが、想像以上の大きさと、太く高く組まれた木材の柱や壁はものすごくゆったりとしていて、清潔で臭いなどもほとんどなく、ここで飼育されている牛は間違いなく快適であろうと想像できます。ここの「カラマツドーム型畜舎」で使用する材は、森林資源の循環利用を進める「SGEC森林認証」を所得している地域の森林から伐り出したものなので、森林の公益的な機能の向上にも貢献します。また、木材だけでなく、設計から製造、加工、施工まですべて地元の人によるもの、つまりは地元の資源を最大限活かすことで地域産業の活性化にもつなげているということが特徴的だと言えます。

本来、一次産業とはこのように地域の資源が活かされ循環されること、そしてその仕組みが維持されることで産業としての力が発揮されてきたものだと思います。しかし、多くの山村地域ではその資源がパーツ化され、別の産業の一部としてしか使われず、結局はその別の産業を営む経済的に力のある誰か(主に都市部の企業)に依存せざるを得ない構造になってしまっているのではないかと思います。でも、本当に力を持っている、いや持つべきなのは地場にある資源や繋がりを守ってきた地元の方々(人)なのだと思います。

そういう意味では「カラマツドーム型畜舎」は、まさに地元の人による地元の、地域の、環境保全のための自立した産業であると言えるのではないでしょうか?

山村地域の方々は、もっと広い視野を持って自ら全体をマネジメントするつもりで地域資源や繋がりを見つめ直し、また都市部の企業も人も、山村地域で守られてきた資源の一部だけを自分達の都合のいいように拝借するのではなく、山村地域全体が循環するような仕組みづくりに貢献するという意を持って一次産業に関わっていくべきではないでしょうか。
| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 17:33 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
あらためて“人から学ぶ”
私は、4年ほど前から森林組合や民間の林業事業体の経営や職員を対象とした『森林施業プランナー育成研修』に関わってきました。この研修には林業に現役で従事するトップランナー、研究者、大学院の教授、コンサルタント等、いわゆる“その道の選りすぐりのプロ”が講師や運営に携わっています。

それは、学ぶ場や学ぶ機会を企画・提供する立場の私にとっても、新たな学びの原資を発掘、開発する上での重要な場になっています。
今回は、その中の一人の先生についてご紹介したいと思います。

その先生は現在70歳を少し過ぎたばかり、農学博士で、森林総研に長きにわたり勤務され、農林水産大臣賞やIPCCがノーベル平和賞を受賞したことに貢献されたとして議長から表彰を受けるなど、広く森林環境に貢献されている藤森隆郎先生です。研修では主に森林(人工林)の間伐や選木についての講義や現場演習を行っています。

藤森先生の知識や講義・演習の内容はもちろんのこと、スキーや森林の現場視察研究等で鍛えた健脚ぶりには研修に参加した誰もが納得と感心を覚えるはずですが、それ以上に、私は藤森先生の研修に挑む態度・姿勢に強い感動と共感を抱かされるのです。

藤森先生は、いわば“その道のプロ中のプロ”です。経験や知識は誰よりも豊富にお持ちです。しかし目線はいつも低く、常にどのような研修生に対しても真正面から誠実に対応します。確実性に乏しいことについては、「忘れてしまったので後ほどお伝えします」。あるいは「勉強不足で今は正確にお答えできないので調べてからお伝えします」等他人にもまた自分に対してもごまかさず応えますし、ご自分の意見や考えをはっきり述べながらも、「他に自分ならこのように考える、私たちの地域でこのように行っているなどありましたら是非教えてください」等、常に謙虚にあたらしい考え方や事実を学ぼうとする態度や姿勢は変わりません。

「それが研究者です」と言ってしまうのは簡単ですが、それを継続することはなかなかできるものではありません。研究者でも、経営者でも、あるいはサラリーマンであっても、ある程度の結果を出しそれが認められると、知識や経験があることをいいことに少しでも楽をしてその地位や状態を維持しようとしがちになります。自分では楽をしているつもりでは無いのかもしれませんが、知識や経験は劣化することに気付かずその時の知識や経験にぶら下がり、すでに他人から見ると“過去の人”“必要のない人”になってしまっているのにもかかわらず、屁理屈を並べてそれまでの地位や状態を必死で守ろうとする人は数多くいます。

藤森先生はそれとは真逆にいる方です。どれだけ経験を積んでも知識が豊富でも常に学ぶ気持ちと意欲、そして、成長しようとする態度・姿勢を常に高いレベルで持ち続けています。

一過性の講義、書籍やWEB上でのデータからも「部分的に学ぶ」ということは多分にあります。現に私も藤森先生の執筆書籍を読み、自分が学びたいことは学ばせて頂きましたが、そこから藤森先生の態度や姿勢までは学ぶことはできませんでした。一緒に仕事をさせていただき、その場での会話、態度・姿勢に直接触れることで、あらためてそのことの重要性に気付かされました。


「人材育成や教育」に携わる立場の人間の一人として、もう一度“人から学ぶ”ことを軸にした学びの場を創造・提供していきたいと思います。


| spfarm | 山村地域と都市を繋ぐ | 13:48 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< September 2017 >>
◆ 新着記事
◆ コメント
◆ カテゴリー別
◆ バックナンバー
◆ プロフィール