寄り合いひろば

森林と里山の保全・有効活用を本気で考えるブログ
S.P.FARMが提供する当ブログは、 森林を取り巻くさまざまな立場の方々とつながり、森林と里山の保全・有効活用を実現する「寄り合い」の場です。
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生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その11 「生物資源の利用から生じる利益の公正かつ公平な配分」
今年10月に名古屋で開催される生物多様性COP10。
この国際会議の枠組みである生物多様性条約の目的は3つあります。

「生物の多様性の保全」と、
「その構成要素の持続可能な利用」、
そして、今回のテーマである
「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分」です。

英語では、”Access and Benefit-Sharing (of genetic resources)”と表現され、一般にABSと略されています。

このABSという概念を説明するために、
「バイオパイラシー(遺伝資源の盗賊行為)」という言葉がよく使われます。

バイオパイラシー
先進国の多国籍企業などは、途上国住民の永年の伝統的生活により
保全・利用されてきた豊かな生物資源(生物多様性)を利用し、バイオテクノロジーにより食料や医薬品など商品開発をして莫大な利益を上げている。それにもかかわらず、途上国にはその利益の公平な配分・還元や技術移転などがなく、生物資源の盗賊行為に等しいというもの。
EICネット[環境用語集]より


現在、遺伝資源に由来する医薬品や作物、農薬、化粧品などの利潤は数兆円にも達すると推定されており、遺伝資源にて天文学的な売上を上げる企業の中には、実は、その遺伝資源を途上国に住む先住民が伝統的に使用していた民間医療をヒントにしていた、というケースが報告されています。

生物多様性条約では、第15条にて、遺伝資源を含む天然資源の主権的権利は、それが存在する国にあるとしています。

つまり、天然資源にアクセスし、利用する際には、提供国(往々にして途上国)の許可が必要であり、契約に基づく利益配分が必要であることを明記しているのです。
しかし、その主権的権利が実際に守られるためには、具体的な手順やルールが必要になるでしょう。

実は、このABSは生物多様性COP10の重要議題の一つです。
なぜなら、2002年にABSを実施する手順についてのガイドライン(ボン・ガイドライン)が採択されたものの、それでは実効性が不十分であるとの声によって、法的拘束力のあるルールを作るべきか、否かで論争があり、COP10はその決着を付ける場と目されているからです。

環境規制法令が各国で次々に採択されるなか、生物多様性条約においては、環境配慮だけでなく、社会的な配慮も含めて、社会や経済のルールを変えていこうとしているのです。

CSR経営を考える上で、そういった動向を理解することは
全ての企業にとって不可欠なことでしょう。
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 11:22 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その10「先住民族と地域社会への責任と配慮」
これまで、「企業の生物多様性に関する活動の評価基準作成に関するフィージビリティー(実現可能性)調査報告」が提示する「基本的概念」をテーマにしていましたが、
それも、残るところ下記2テーマになります。
先住民族と地域社会への責任と配慮
生物資源の利用から生じる利益の公正かつ公平な配分

これらは、生物多様性条約における環境的な側面ではなく、社会的な側面をクローズアップさせるものです。
そして、企業にとっては実践的な生物多様性保全活動に取り組むために大変重要な概念と言えます。


「豊かな自然環境を破壊して経済発展を果した先進国が、やっぱり大事だったからと多様性豊かな地域が残されている我々(発展途上国)に守れというのは一方的だ」

「先進国の企業が多様な生物種の遺伝資源や生化学物資をつかって薬を開発し、利益を上げて、その生物種の生息地である熱帯林などを守っている発展途上国に何の利益も還元しない」



これは、ある専門家が生物多様性条約に対する発展途上国の論理を、「乱暴に要約」するとと注釈をつけて解説したものです。

今回のテーマは「先住民族と地域社会への責任と配慮」。
先住民と地域社会への責任と配慮が事前になされないとはどういうことでしょうか?
実際に問題になったケースの一つとして生態系の保護を目的に
作られた「保護地域」のあり方があります。
以前のコラムでもお伝えしましたが、
保護地域は貴重な生態系を持つ土地の開発を防ぎ、生物多様性を保全していくために重要な役割を持っており、またその数は着実に増えています。そのこと自体は歓迎すべきことです。
しかし、前述の専門家は下記のように続けます。

「先進国のNGOが拙速に保護地域の拡大を働きかけたせいで、自分たち先住民の権利がないがしろのまま自分たちが住んでいた土地が保護地域にされてしまった」。


つまり、国際的な環境保全の動きを受けて、途上国政府が熱帯雨林などを保護地域に指定する際、その豊かな自然と共生して暮らす先住民を強制的に移住させるというような事例がありました。
現在では、これらの問題提起を受けて様々な保護地域で先住民が保護地域の運営に主体的な参加ができるようなプロジェクトが始まっていますが、今もなおこのような対立構造は続いており、生物多様性条約に関する会議にて大きな衝突材料になっているとのことです。

なるほど、気候変動枠組条約の際にも途上国と先進国の立場の違いがクローズアップされました。
それは生物多様性条約に関しても大きなポイントのようです。

それは、私たち先進国の経済社会が途上国の生態系に由来する生態系サービスを享受して成長と発展を続けてきた事実に起因しているものです。そして、私たちは、その事実とともに、その過程で生物多様性が危機的な状況になったことを忘れてはいけないでしょう。

地球規模の問題である生物多様性の危機を回避するためにはこの立場の違う途上国と先進国の協力が欠かせないものであることは明白です。
生息地保護を考える際には、「先住民や地域社会へ配慮」することは標準的な考え方となりつつあると言えます。


| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 12:14 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その9「生態系・生息地保護」(2)
今回は生態系・生息地保護という観点から
「遺伝子組み換え生物」「外来種」問題についてお送りします。

まず、「遺伝子組み換え生物」とは、
農薬をかけても枯れないトウモロコシや、
早く成長する樹木などの高機能な食品や樹木などをつくるため、
例えば、ジャガイモとクモなど自然界では交雑しない生物同士の
遺伝子を人工的に組み込みつくられた生き物です。

遺伝子操作をすることで、これまでにはありえなかった高機能な
生物を作り出せるということもあって、
温暖化対策や環境汚染を緩和したり、あるいは、
食料不足に貢献するものと新しい技術への期待がある一方で、
食品であれば、安全性の問題が心配されたり、
生態系への影響が懸念されており、大きな論争が起きています。

その論争は今だ決着がつきそうにありませんが、
日本は遺伝子組み換え食品を世界で一番多く輸入しているといわれており、家畜のえさ用のトウモロコシや植物油用のナタネなど、
私たちは意識しないうちにそれらを食べていることになります。
また、そういった遺伝子組み換え生物が日本国内で運搬される途中で一部が道に落ち、自生していることも分かっています。

このように意図せずに遺伝子組み換え生物が野生化することで、
従来の生態系を破壊する可能性があると考えられており、
生物多様性条約締結国会議では、カルタヘナ議定書(生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書)にて、栽培用の遺伝子組み換え生物の輸出入に関する取り決めを行っており、日本も批准しています。

また、「外来種」は「遺伝子組み換え生物」と同様に生態系への懸念が指摘されているものです。
「遺伝子組み換え生物」は人の手によって新しく作られた種ですが、「外来種」とは、「人の手によって移動してきて従来そこにはいなかったが、野生化した生物」のこと。
外来種も、在来の生物種や生態系に様々な影響を及ぼすもの、
中には在来種を絶滅に追いやることもあります。
そして、外来種の駆除活動は行われているものの、
莫大な資金がかかる一方で完全に駆除することは大変難しい問題であり、生物多様性の保全という文脈においても大変大きな課題となっているのです。

そこで、外来種問題では予防、
つまり「入れない・捨てない(ペットなど)・広げない」が
重要になってきます。
企業活動との関連性で考えると、事業に関連して何か木を植えるような場合、外来種の木を植えるのではなく、在来種の木を植えるという取り組みが見受けられるようになりましたが、これは外来種問題への対応策として好事例といます。

しかし、人やモノの世界的な移動が一般化している今日では、
農産物商品であればそこに付着する虫やウィルス、あるいは輸送するパレットなどを介して企業活動の中でも意図せずに外来種を持ち込むということもありうるということに注意しなければならないでしょう。

企業が生態系や生息地を保護するというのは、
それらが重大な影響を及ぼすようなリスクを持ち込まないという
予防的姿勢も必要となってきます。
まずは、遺伝子組み換え生物や外来種が生物多様性への脅威に
なりうることをしっかり認識し、
自社の事業のどこかで遺伝子組み換え生物や外来種を利用し、
生態系への配慮が懸念されないかチェックしてみることをお勧めします。
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 11:16 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その8「生態系・生息地保護」(1)
今回のテーマは生態系・生息地保護です。

先日、下記の日経ネットのニュースを目にしました。
(一部抜粋)
国際自然保護連合(IUCN)が3日発表した2009年版の絶滅危惧種
リスト(レッドリスト)で、絶滅の恐れがある生物が前年より363種増え、
1万7291種に達したことが分かった。
環境汚染や乱獲などが原因とみられ、既に絶滅もしくは野生では絶滅
したとされる生物も6種増え、875種に達した。

生物種の絶滅速度がかつてないほどのスピードで起きていると
いわれて久しいですが、それが調査結果として示された
ということでしょう。
そして、その絶滅危惧種の多くはある限られた地域に生息して
いるということもある調査で分かっています。

そのような地域をホットスポットと言い、
シダ植物および種子植物などが含まれる維管束植物の50%と陸上脊椎動物の42%が、ホットスポット(計34箇所)にのみ生息しているとのことです。
実は、日本列島もホットスポットのひとつに指定されている生物多様性を保全する戦略上、重要な地域です。


生物多様性の保全に取り組むために、
全てのエリア、全ての人間の活動を停止することはできません。
しかし、上記のように生物多様性を保護・保全するために
重要な地域があります。
そのような地域は、きちんとした法整備等によって、「保護地域」として指定され、適切に管理されることが望ましいと考えられています。

保護地域には、「原生自然地域」や「国立公園」、「天然記念物」など、厳格な保護が必要で、人の介入を避けるべきものから、
農地などを含む「景観保護地域」や自然の生態系の持続可能な利用を主目的にした「資源保護地域」という、人間の活動との調和や共生を図っていくものなどさまざまなタイプがあります。

この保護地域に関しては、生物多様性条約の第8条に記述があります。
グローバルレポートイニシアティブ(GRI)のレポートでは、
「ビジネスにかかわる生物多様性条約の側面」と見出しをつけて、
この第8条は、企業が操業できる地域とできない地域を示すこと、
また、操業地域内やその周辺での生態系の保全活動が望ましいことを提示している条約文だと報告しています。


国内外には様々な保護地域があり、また保護地域になってなくとも、生物多様性保全の観点から重要な地域があります。そういった地域を含めて、事業活動に関連する生態系・生息地への配慮があるかないかが企業姿勢を顕著に示すものになるでしょう。

それは、開発事業の伴う業種はもちろんのこと、それだけでなく、
木材をはじめとした原料調達先の生物多様性への配慮もチェックされるようになってきており、あらゆる業種に関連することです。
生態系・生息地の保護というと、社会貢献として自然保護団体への寄付を一番に思いつくかもしれませんが、それだけではなく、企業活動に直結する問題であるという認識が企業には求められはじめてきたようです。



(次回は、第8条にて触れられている「遺伝子組み換え生物」と「外来種」をテーマにお送りします。)
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 12:21 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その7「予防的アプローチと順応的管理」
今回のテーマは、「予防的アプローチと順応的管理」です。
予備知識で持っていた環境問題について、よくよく調べてみると、
本当にそれは「問題なのか?」あるいは、その環境問題を解決するものとして提唱されている手法は「正しいのか?」について科学的な根拠が100%確実ではないらしいことが分かったというのは思いのほか、多いものです。

「地球温暖化は起きていない」、「環境問題のウソ」などの主張が注目されていたりしますが、これらと「科学的な確実性」とは深い関わりがあるようです。

さて、問題は私たちはそういった情報を持ってどのような判断を下すか、についてです。
100%確実だと言い切れるようになるまで、どんなに時間をかけてでも検証を重ねるべきでしょうか。その間に、もしかしたら二度と取り戻せない環境が破壊され、それが結果として、私たち人間の首を絞めることになるかもしれません。


こういった問題にぶち当たったとき、
私たちはどうするべきなのかについて、
一つの指針となるのが「予防的アプローチと順応的管理」です。

「予防的アプローチ」という言葉が広く知られるようになった
平成4年に採択された「環境と開発に関するリオ宣言」によると、第15原則において、
環境を保護するため、予防的方策(precautionary approach)は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。
深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない。

とあります。これは、環境保全対策などを決定するプロセスにおいて、「科学的に100%確実だとは少なくとも今は言い切れないこと」があるとしても、一度破壊してしまったら、もう二度と元には戻らない生物や、生態系を破壊してしまったり、それと同等な深刻な被害が起きる場合には、環境を保護するという大目的に従って、予防的に行動する必要があるということを意味します。

また「順応的管理」とは、「適応的管理」とも呼ばれ、
国土交通省による「魚がのぼりやすい川づくりの手引き」によると、
当初の予測どおりの結果が得られない場合をあらかじめ管理システムに組み込み、常にモニタリングを行いながらその結果に合わせて対応を変えるフィードバック管理

とあります。
この順応的管理とは生態系に関して依然として不明瞭な部分があることを前提としていることが従来の管理方法と大きく異なります。
計画当初の想定が間違っているかも知れないので、適宜、経過とともにモニタリングをして、その結果に基づき、(環境を保護するという目的を達成するため、)柔軟に具体的な取り組み方法を修正していくというものです。

これら2つの概念は、すでに国内外の環境政策に関する施策や文書に多く採用されています。
しかし、その定義や用語、その扱い方(適用する分野)に関しては国際的に統一したものがまだありません。それ如何によって、今後の国際ルールに大きく影響するため、国際会議などでは、政治的な対立もあり、激しい議論が交わされている最中です。

つまり、今だその概念の適用の仕方について論争があるのですが、
ある専門家は定義が曖昧であることから、現状においては、「その場しのぎに行き当たりばったり(科学は後回しで、まず行動してみよう)」などと、「科学的に妥当性が吟味できない行動を正当化するために使われている」と警鐘を鳴らしています。
そして、実効性のある順応的管理のためには下記のようなことが必要だといいます。
・過ちを認め、過去から学ぶ
・ルールは事前に決める
・数理モデルよりも良識を信じる
・知ったかぶりは止めよう

(詳細はこちらからご覧になっていただけます。)

「予防的アプローチと順応的管理」という概念は、本来、環境問題に関する「分からないこと」を問題解決ができない言い訳にしない、あるいはそれを前提としても環境問題を克服することは出来るという示唆を与えるもののはずです。
しかし、それらの言葉を文書に盛り込む「だけ」では、むしろ本末転倒な結果になるということでしょう。この言葉を真に読み取るならば、不確実性がいつも伴う地球規模の自然環境に対していかに誠実に対応できるか、それを私たちに問う言葉なのではないでしょうか。

生物多様性への配慮が、次第にCSRの取り組み方針の中で重要視される昨今、環境アセスメントを必要とする事業を実施する際や、
社有林の整備方針について考える際などは特に、これら2つの概念が提示することをしっかり念頭に入れておく必要があるでしょう。
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 17:17 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その6「生物多様性の保全における企業の責任」
今回のテーマは「生物多様性の保全における企業の責任」です。

突然、「生物多様性の保全における企業の責任」と言われても、なかなか検討がつかないかもしれません。
そうであれば、「責任」と常に背中合わせにある「権利」について考えてみると分かりやすいと思います。

先般、公表された環境省による「生物多様性民間参画ガイドライン」では、「事業者の活動等と生物多様性の俯瞰図」というものを用いて、下記のように企業と生物多様性について説明しています。

生物多様性の恵みを受け、影響を与えているのは、一部の事業者に限られることではないことが分かります。
農林水産業や建設業、製造業、小売業や金融業、マスメディア等であっても、自然環境や農産物、木材、水産物等の生物資源の利用、サプライチェーン等の物質の流れや投融資を通じて、生物多様性と直接的に関わる他の主体の活動に影響を与えたり、恵みに依存したりしています。


つまり、自然資源を多く利用しているような企業かどうかに関わらず、あらゆる企業は直接的・間接的に生物多様性に由来する恵みを利用する権利を行使しながら、その経済活動を営んでいます。
権利があれば、それ相当の責任が生じるのは当然と言えます。
企業活動が生物多様性への影響力が大きいとなればなおさらです。
ガイドラインによると、生物多様性の主要な脅威と民間事業者との関連性(影響)を次のように整理しています。

生息・生育地の変化
 ・・・原生林を切り開くなど、土地利用を変えることで、生物の生育・生息地を減らす
  こと。その生物資源を利用する地域社会等にも影響を与えます。
生物資源の過剰採取
 ・・・観賞用や商業的利用による固体の乱獲、盗掘、過剰な採取など。
気候変動
 ・・・温室効果ガスの排出が気候変動をもたらし、それが生物多様性に影響を与えます。
外来種
 ・・・外来種が地域固有の生物相と生態系に影響を与えます。
栄養塩蓄積・汚染
 ・・・栄養塩類等により、生物の生息・生育環境に影響を与えます。


主だった生物多様性の脅威が民間事業者と無関係ではなく、大きな影響を与える恐れがあるのです。上記のような脅威をサプライチェーンを含めた一連の企業活動の中で作り出しているか、いないか。そういった認識の元、今までは、認識や評価がなされてこなかった生物多様性への影響について把握することこそが「生物多様性の保全における責任」を果たす第一歩となるはずです。

CSRの考え方が浸透した今日において、本業の中で生物多様性を保全することが求められ始めています。そうした時には、上記のような生物多様性への十分な理解に基づく実践が大変重要になってくるでしょう。
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 18:45 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その5 「生物多様性の価値」
今回のテーマは「生物多様性の価値」です。

「生物多様性」という言葉が様々な局面で注目され、
その保全に向けた動きが国内外で活発になりつつあります。
しかし、「生物多様性はなぜ保全しなければならないのか。」
という疑問にぶつかったことはないでしょうか?


それらをクリアにするためにも生物多様性の価値について
考えることは大きな意味があると思います。
そこで今回は、生物多様性の価値を説明しようとする
国際的な動きを2つご紹介します。

一つ目は、地球規模で生態系のあり方が人間社会に
どのように影響するかについて国連主導で調査した
『ミレニアム生態系評価(Millennium Ecosystem Assessment, MA)』です。
このミレニアム生態系評価では、
自然が私たちにもたらすさまざまな恵みである
「生態系サービス」を用いて、
「生物多様性(=地球上の生き物や生態系の多様さ・豊かさ)」は、
その供給源であると説明しています。
例えば、森林からは木材やきのこなどの林産物ができ、
私たちはそれを消費します。森林が砂漠になってしまったらそれらを
得ることはできなくなってしまいます。木材やきのこが生産できる森林
という生態系があってこそ得られるものです。

このような自然からの恵みを生態系サービスと呼び、木材やきのこ
のような私たちに資源を供給してくれる「供給サービス」のほか、
森林が土砂崩れや洪水を防ぐ機能があるといた「調整サービス」、
森林と暮らす生活に基づく山村文化を支える「文化サービス」、
そして、森林が地球規模での水循環に大きな役割を担っていたり、
光合成により酸素をつくるなど前述3つのサービスの基盤となっている
「基盤サービス」の4つに大別しています。

生態系サービスは私たちの安全や健康、豊かな生活の基盤や
社会的な絆などと複雑にまた、強く関連しているものです。
しかし、ミレニアム生態系評価は、
4つの生態系サービスをさらに細かく24種類に分類したとき、
1950年代以降にそのうちの15種類のサービスが劣化しているか、
持続不可能な利用がされていると報告しています。

二つ目は、生物多様性の経済学的な価値を明らかにしようと試み
でもある『生態系と生物多様性の経済学(The Economics of Ecosystems and Biodiversity, TEEB)』というイニシアティブでの報告です。
生物多様性COP9にて発表した中間報告で、私たちが失っている
生態系サービスの価値は毎年50億ユーロ相当であり、
また2050年までに生物多様性が失われることによる経済的損失が、
世界のGDPの7%ほどに達する可能性が明示されています。

現在、刻々と進行している生物多様性の損失を
なぜ止めなければいけないか。
生物多様性の価値は、生態系サービスという言葉やGDPだけに
集約されるものではもちろんないと考えます。
しかし、上記のような調査によって、
経済的な合理性に欠いている行動であり、
一刻も早くその損失スピードを緩める必要があることが
分かってきているのです。


世界の潮流として、生物多様性に配慮した企業活動が
求められてきている中、
自社にとって生物多様性の価値は何であるかをしっかり捉え、
また、なぜ生物多様性保全を掲げるかについて公表し、
それらに基づいた取り組みを確実に行っていくことが
重要なのではないでしょうか。
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 12:25 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その4「生物多様性の意味」
今回から、環境省の事業である「企業の生物多様性に関する活動の評価基準作成に関するフィージビリティー(実現可能性)調査報告」に提示してある、企業が生物多様性の理念・方針を構築する際に基づいていなければならない基本的概念について紹介していきます。

今回は(1)生物多様性の定義についてです。

一般的に、生物多様性は、以下の3つの階層の多様性を説明するものです。
●生態系の多様性
様々な生物の相互作用から構成される生態系の存在
●種の多様性
様々な生物種の存在
●遺伝的多様性
種は同じでも、持っている遺伝子が異なる生物の存在

例えば、これを森林で考えると、多様な生物の生息地として名高いアマゾンなどの熱帯雨林や、永久凍土の上に生育している、主に針葉樹林を中心とした天然林であるシベリアなどの北方林、
さらには、四季折々の様子をあらわす日本などの里山(人工林)の広葉樹林など、森林と一口に言っても色々な森林があり、それぞれに固有な生物種が生息し、固有な関わり方(生態系)をしています。

また、同じ種類の生物種でも様々な遺伝子を持っています。
それは私たち人間の姿やかたちが一人ひとり異なるのと同じように、他の生物もそれぞれに個性や違いがあり、それは遺伝子が多様性によるものなのです。

しかし、「生物多様性」の意味を理解するためには、上記を解釈するだけでは十分ではありません。
肝心なのは、この言葉が開発された背景を知ることです。
「生物多様性 (biodiversity)」とは、学術的な言葉である「生物学的多様性(biological diversity)」を略したものです。1985年、米国科学アカデミーが主催するフォーラムの名前として初めて考えら
れました。

「生物学的な多様性が失われていること」や、「生物が猛スピードで絶滅していること」について強い問題意識を持っていた生物学者たちが、このふたつの意見を組み合わせて「生物多様性」と呼んだのです。それを多くの人に伝える必要があると考え、生物多様性に関する国際フォーラムを開催し、記者会見の中で、「種の絶滅の危機は、熱核兵器戦争の脅威につぐ文明への脅威だ」と訴えたのです。
つまり、「生物多様性」という言葉は、生物の「多様性」の重要性を説明し、その危機的状況を伝えるために創られた言葉なのです。

「生物多様性」というと、その言葉が表す内容は大変広く、またそのつながりが複雑でもあることから、一般的に理解しにくいものと思われがちです。しかし、今後企業が「生物多様性」に取り組む上では、それらに関わる専門的な詳細や問題のすべてを理解するということよりも、むしろそこにある危機が社会的に訴えられ、その問題への取り組みが求められている現状をしっかり捉えることこそが重要なのだと考えます。

「生物多様性」という言葉に込められた、絶滅危惧種といわれる生物の危機ばかりでなく、私たち人間の危機にもつながる重要な意味。
次回は、その意味を具体的に説明するための「生物多様性の価値」についてご紹介します。

| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 14:23 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その3
「生物多様性」という言葉を耳にする機会は、数年前に比べて飛躍的に多くなり、また企業の環境・CSR担当者の方にお伺いしても「生物多様性」をご存知の方ばかりです。

しかし、「生物多様性」の言葉が持つ意味合いやCSRの文脈にて何をするべきか明確に捉えられている企業さんはどのぐらいいるでしょうか?

地球温暖化と比べて、生物多様性の取り組みは大変評価しにいくいものです。地球温暖化対策であれば、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出抑制量が少なければ少ないほど評価されます。しかし、生物多様性に関して言えば、それを評価する統一したモノサシがないという課題があります。

しかし、そうこうしているうちに、絶滅する生物種は刻一刻と増加し、生物多様性は縮小している。本質をつく、効果的な生物多様性保全の取り組みを推進させるため、生物多様性保全活動を評価する指標づくりが課題となっています。

今年3月、環境省事業として、「企業の生物多様性に関する活動の評価基準作成に関するフィージビリティー(実現可能性)調査報告」が公開されました。
その報告書は、「企業が真の意味で生物多様性保全に責任を持ち、かつ貢献するには、その経営理念・方針の中に生物多様性保全を明確に位置付けることが必要である。」と述べています。しかし、その前提として、

このような企業の生物多様性に関する理念・方針は、下記のような国際的又は国内に存在する基本的概念に基づいていることが求められる。
生物多様性の定義
生物多様性の価値
生物多様性の保全における企業の責任
予防的アプローチと順応的管理
生態系・生息地保護
先住民族と地域社会への責任と配慮
生物資源の利用から生じる利益の公正かつ公平な配分


とあります。
報告書の中では、具体的な評価基準として、マネジメント評価基準とパフォーマンス評価基準のフレームワークについて説明していますが、上記7つについての基本的概念について理解しないことには前に進めないとの注意があります。

これらすべてを理解して初めて、企業による生物多様性に関する方針が決定されるべきということです。そこで、今後は、それらについて森林の視点から考えてみたいと思います。
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 12:20 | - | - | - | - |
生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性その2
日本政府は、2010年名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)にて、「SATOYAMAイニシアティブ」を提案する予定です。

「SATOYAMAイニシアティブ」とは、
日本の里地里山のような二次的自然における持続可能な利用の事例を、日本のみならず世界で収集・分析することにより、地域コミニュティーにおける自然資源の持続可能な管理と利用についてのモデルの構築を目指すものです。


「二次的自然」は聞きなれない言葉かも知れません。
人の手が入っていない自然を「一次的」と考え、人の働きかけによって創りだされ、人が手を加えることで管理・維持されてきた自然のことで、水田やため池、雑木林などのことを指します。

4月3日の中日新聞の記事によるとそれが林業とも無関係でないことが分かります。
その8割がスギやヒノキなどの人工林である奥山で
植物304種、コケ植物45種、哺乳(ほにゅう)類18種、鳥類40種、昆虫60種など、希少種の半数程度が確認された。

「全く人の手が入らない方が自然は豊かである」というのは必ずしも正しくありません。

上記の調査にあるように、人の手入れが前提になっている人工林は絶滅危惧種の生息地となっています。
つまり、人工林がどのような状況にあるかはその貴重な生き物の生息地と密接に関わっているのです。
国内の森林面積は1970年代から変わらないのに、鳥類の生息域が大幅に減少していることが、森林総合研究所の山浦悠一・特別研究員(森林保全生態学)らの調査で分かった。

4月20日の毎日新聞の記事の内容です。
記事では、林業が停滞し、伐採→植栽→保育(間伐)→伐採というサイクルが途絶えたことと鳥類の生息地減少の関連を伝えています。

世界では、森林の減少が大きな問題となっていますが、このように、日本の森林はまた違った問題を抱えています。
日本社会や企業、市民は、このことをしっかり理解する必要があると思います。


上記のことからも森林整備の一つである間伐は地球温暖化の対策のみならず、生物多様性を保全する上でも重要な取り組みと言えます。
CSRの一環として行う森林整備は、生物多様性保全貢献活動ともなるのです。しかし、その時は、一時的な取り組みにしてしまうのではなく、
一歩踏み込んで、
生物多様性の保全に関する明確な目標を持ち、
長期的な森づくり計画を実施することが必要なのだと思います。
| spfarm | 生物多様性COP10に向けて〜企業と生物多様性 | 10:32 | - | - | - | - |
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